防犯研究塾 「 安全安心はタダでない」 [万引き防止.com]

マルハニチロ群馬工場(群馬県大泉町)が先週1日、一部操業を再開した。この工場は今年3月末まではアクリフーズ群馬工場といった。あの農薬混入事件せ世間を騒然とさせた工場である。同社は、もともとは雪印乳業の冷凍食品部門として1971年に事業開始。雪印乳業の食中毒事件後に分社し社名を改めた後、03年にマルハと統合前のニチロの子会社になった。雪印集団食中毒事件による経営悪化から冷凍食品部門を分社化した子会社・雪印冷凍食品として設立された歴史がある。

ところが昨年12月に群馬工場で生産された冷凍食品から農薬が検出され大騒動に。先週1日の操業再開は昨年12月27日以来で約7ヶ月ぶり。今日4日はピザラインを再開し、10月までに順次事件前に製造していた全5種類の製造ラインを動かす予定。事件を引き起こしたのは契約社員だった男(49)。裁判が続けられており今週8日に判決が言い渡される。

男は待遇への不満を動機に挙げているが、監視システムに不備があったのは否めない。そのため工場側は操業再開に当たって、以前は5台だった工場内の監視カメラを5台から30倍以上の172台に増やし、各エリアの映像を事務所のモニターでチェックする厳重な監視体制を敷いた。意図的な異物混入を防ぐフードディフェンス対策を強化したのである。

まず操業を再開したのはクリームコロッケで、9月初旬には店頭に並ぶ予定。しかし、直ぐに消費者が安全安心だとして食べてくれるだろうか。操業再開のニュースを知っても大方の消費者は“そうかそうか”で聞き流してしまうはず。農薬混入のイメージは残ったまま。

工場長は「消費者に安全で安心な商品をお届けしたい」と決意を新たにしたというが、私からすれば『今回のような事件はもうたくさん。消費者に安全で安心な商品をお届けするためにコストをかけた(具体的な金額を明示して)、このコストは企業努力で何とか押さえ込むが、場合によっては商品価格に影響が出るかも知れないこれは安全安心な商品を提供するコストの一環。安心して食べてもらいたい』ぐらいのことを言って欲しかった。

監視カメラを5台から172台に増やすのに幾らかかったか具体的金額が伝えられれば、安全安心にはそれだけの金がかかるのかと消費者はたとえ商品が多少値上がりしても納得するはずだし、会社は納得してもらう広報を考えなくてはいけない。どこの企業も「安全安心はタダでない、金がかかる」と苦しみながらも口に出さないのが現状ではないか。

1社先行は怖いが、全社がそういう意識で行動すれば怖いものはないはず。もう「安全安心は金がかかる。消費者にもご負担を…」と口に出して、消費者の意識を変えさせなければいけない時代になった。物を売る店舗では、安全安心を守るために監視カメラ、防犯ゲート・防犯タグが必要だし、それなりのマンパワーも必要。売値に少しは乗せないとやっていけるものでない。

私は時折、コンビニでは飲み物は高いから買わないと書いたり話すが、それに見合った努力が見えれば納得する。20年以上も前に大流行りしていたドラッグストアの社長が、ウチの店は万引きが多いほど商品を品揃えしいて人気が高いと豪語していた。あるとき私は、その店の売値が他より高いことを知って、その店には行かなくなった。

今から思えば、あのときのドラッグストアの社長が、万引きが多いから監視カメラ、防犯ゲート・防犯タグを付けたので売値に少し反映させていると話していたら売値が高いことを納得していたと思う。その店は今では監視カメラ、防犯ゲート・防犯タグ、防犯ミラーを導入している。ところが今、どんな店舗をみても「万引きはもうくさん」と思っているようには見えない

むしろ、“万引き犯さん、いらっしゃいいらっしゃい”の態勢ではないだろうか。万引き防止を言うときもあるが、実行力の伴わない“言うだけ衆”に成り下がっていないか。万引き防止がただの“茶番劇”となっているように見受けられる。これはいけない。万引き防止への覚悟が見えない。覚悟があるだろうか…。

“シマラー”と呼ばれるファンまでいるアパレル販売店「しまむら」で感心したのは、ほとんど女性客相手なのに200円ぐらいの商品にまで防犯タグをつけていること。出入り口に防犯ゲートがあっても、どの商品につけているのかわからない店舗が多いが、「しまむら」は万引き防止についての覚悟がわかる。

先週1日の閣議に報告された厚生労働白書によれば、今年2月に20~80代の5千人を対象にインターネットで実施した健康寿命調査によると、普段から健康に気をつけるよう意識しているか尋ねたところ、「積極的にやっていることがある」が17.2%、「生活習慣に気をつけている」が36.7%、「何かしている」派は約54%だった。

一方、「病気にならないよう気をつけているが何もやっていない」が32.5%、「特に意識せず、何もやっていない」が13.5%、「何もしない」派が約46%にのぼっている。万引き防止で意識調査をすればどうなるだろうか-。「万引きされないよう気をつけているが何もやっていない」、「特に意識せず、何もやっていない」、「何もしない」の3項目が圧倒的に多いのではないだろうか。

それで店舗経営が上手くいけばよいが、そういうことはありえないはず。経営を成り立たせるためには、それなりの設備装備が必要であるし、店員の数も必要。先月31日に発表された牛丼チェーン「すき家」の労働環境改善に関する調査報告書を読めばいい。店員の1人勤務を早期に解消することを第三者委は求めている。これこそコストがかかる。

このことを世間にわかってもらえるように「知らせたり知らせられたり」しなければならない。私が子供の頃に流行った歌の中に「知らせられたり知らせたり」(隣組=岡本一平作詞)というのがあった。お客は神様と言うが簡単に悪鬼にもなる。そうさせないためには、監視カメラを目だ立たせ、防犯ゲートの防犯タグを増やし、売場に店員を増やすことだ。

『万引き被害はもうけっこう。防止するために監視カメラ、防犯ゲート・防犯タグを導入し、店員を増やし、保安警備員が常駐しています。すべてコストが高くついています。しかし、精一杯の努力で“毎日が安い!”を目指しています』などといった内容ぐらいのことを大きな横断幕にして目立つ壁に貼り出したらどうだろうか。万引きだけでなく、内引き、レジ狙 い強盗などももうたくさんでしょう?。

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