有機分子ワイヤを通る電子移動速度の高速化を実現 [科学技術振興機構]

東京大学 大学院理学系研究科の助川 潤平 博士、辻 勇人 准教授(JST さきがけ研究者兼任)、中村 栄一 教授らと、ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学のグルディ教授らの国際共同研究グループは、COPVと名付けた新開発の有機分子ワイヤ中を電 子が通る速度(電子移動速度)が、既存の分子ワイヤに比べて840倍程度も速くなることを発見した。高速化の要因としては、①分子ワイヤで連結されている 電子供与体(電子を提供する物質)と電子受容体(電子を受け取る物質)間の電子的相互作用(電子的カップリング)の増大と、②非弾性トンネリング注1)と 呼ばれる非線形効果の関与を示唆する結果であった。特に、②のような効果は、これまで量子ドット等の無機半導体やカーボンナノチューブ(CNT)等の炭素 クラスタ(炭素原子で構成される物質)等では観測されていた一方で、有機分子ワイヤでは、基板上に固定した分子を極低温(マイナス270度程度)等の条件 下で観測した例に限られていた。今回、設計可能な有機分子ワイヤで常温駆動する初めての例として、基礎科学的重要性とともに、常温駆動する単分子エレクト ロニクス素子等さまざまな方面への応用も考えられ、高機能・省電力な分子コンピューターの開発や早期実現に貢献するものと期待される。

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140825/index.html

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